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【合格体験談】統計検定2級

報告するのが遅くなりましたが、ちょうど年度変わりである2021/3/31に統計検定2級(CBT)に合格しました。 統計学機械学習や深層学習といったAI領域の技術の基礎ということもあり、統計検定の受験者数は年々増加しているようです。

統計検定2級は、資格試験の中では 標準的な難易度 に分類されるようです。 大学で統計学を学んだ方であれば難なく取得できる資格であると思いますが、大学で統計学を学んでいなかった私はそれなりに勉強する必要がありました。 そこで、これから統計検定2級を受験しようと考えている人向けに、統計検定2級に合格するために私が勉強したことを紹介したいと思います。

なぜ統計検定を受けようと思ったか

仕事で機械学習や深層学習のプロジェクトにかかわる中で、機械学習の論文や各種機械学習向けのライブラリで用意されているアルゴリズムを理解する必要が出てきました。 これまでは知らないアルゴリズムが出てくるたびに本やWeb記事で調べることで対応していましたが、場当たり的であったために理解したようなしていないような感じでした。

基礎を固めるために機械学習界隈では非常に有名なPRML本を手に取って読み始めてみたのですが、バックグラウンドのない統計学の基礎知識が要求されるために100ページ足らずで挫折してしまいました。 そこで統計学の知識をつけるために、東京大学出版会から出版されている 統計学入門(基礎統計学Ⅰ) を読んだりして統計学の勉強を進めていくうちに統計検定というものを知りました。

今まで資格試験についてはあまり興味がなかったのですが、統計検定の範囲を見て体系的に学ぶには資格取得を目指すのもありだと思いました。 これが統計検定を受けようと思ったきっかけです。

前提

最初に統計検定2級を受験することを決めたときの私の前提知識や背景などを書いておきます。

  • 統計学に関する知識
    • 平均、分散、信頼区間などの基礎知識はあった
    • 確率分布や検定についての知識はなかった
  • 数学について
    • 大学では物理学を専攻していたため、大学数学に関してはある程度素養があった
    • 大学院卒業後は微積線形代数にほとんど触れていなかったため、部分積分すらも忘れていた
  • 資格試験について
    • 会社に入ってから資格試験を1度も受けていなかったため、試験というものに対してかなりのブランクがあった

このようにしばらく数式を扱っていなかったことと、統計学に関する知識がほぼない状態であったので、それなりに試験対策する必要がありました。

勉強したこと

ここからは統計検定2級に向けて勉強したことを書いていきます。 最初は手探り状態であったこともあり、資格取得を目指すのであればもっと効率的な方法があったと感じています。

そしてここで紹介している方法は、ほかのすべての人にとって最適な方法とも限りません。 これから統計検定2級に向けて勉強しようと考えている人は、あくまで参考程度に見てもらえればと思います。

統計学入門(基礎統計学Ⅰ)

言わずと知れた統計学の名著です。 統計学についての基礎知識を得るため、本書を読みながら章末の問題を解きました。 確率分布や検定あたりはまったく知らなかったため、統計学の考え方に慣れるまでが大変でしたが、この本の章末の問題を解くことで、統計学に対する理解が定着していきました。

理解を深めるために、問題の解答 をまとめたりPythonプログラムで再現させたりしていました。 このおかげで統計学に対する理解は深まった一方で、統計検定2級を取得することを目的とするならここまでやらなくてもよいかなと思いました。 統計検定2級を取得することを目的とするなら、本書を1~2回読んだ後は過去問演習に移行してゴリゴリ問題を解いていくのが早道だと思います。

なお、統計検定2級で頻出の分散分析は本書の範囲外となっているため、別の教材などで勉強する必要があります。 一方本書に関しては、数学的な素養(高校数学レベル)がない人が読むのは難しいという話もありますので、そのような方は次の「統計学の時間」から勉強を始めるのがよいと思います。

統計学の時間

正直なところ、統計検定2級の取得を目指すのであれば、このサイトにある内容を理解して演習問題と過去問をこなすだけで十分だと思いました。 私も試験直前はこのサイトにある演習問題を一通り解きつつ過去問を解いて、理解が不十分なところをこのサイトで知識を補うことを繰り返していました。

試験対策としては、「統計学入門(基礎統計学Ⅰ)」よりもおすすめできます。 網羅範囲も統計検定2級を意識しているようで、過去問に出てきた話題は難問を除いてほぼ網羅されていました。 統計検定2級の解説記事 を書いてあることからも統計検定2級を意識していることがわかります。

日本統計学会公式認定 統計検定 2級 公式問題集[2017〜2019年]

いわゆる過去問です。 試験2週間くらい前は仕事が終わった後に時間を取って過去問を解き、理解できていなかった部分は「統計学の時間」で補っていました。

解説がきちんと理解できて、収録されている6回分について時間を測って8割~9割取れるようになるまで繰り返せば合格は目前だと思います。 私は6回のテストすべてについて3回解き、最終的に9割正解くらいになっていました。

試験当日

CBTでの受験のため、いつでも受けられるという自由度の高い試験であるのにもかかわらず、久しぶりの試験ということでかなり緊張しました。 実際に試験を開始したら、今まで勉強してきた内容がすぐに出てこなくて焦りました。 このような試験では、試験慣れも合否に大きく影響を与えると思いました。

試験内容については守秘義務もあり深くは説明できませんが、おおよそ過去問と同じくらいかやや難しい印象がありました。 紙媒体方式では7割で合格であるのに対してCBTでは6割で合格であることから、難易度が調整されているのかもしれません。 また計算用紙も配られるのですが、純粋な紙ではないためその点もやりづらかったです。

電卓は持ち込んで正解でした。 電卓は カシオ製のもの を事前に購入しておき、過去問を解くときに使用して使い方に慣れておきました。

電卓を使うことで計算ミスなどを防げるので、持ち込むことをおすすめします。 ただし関数電卓のような高機能な電卓は持ち込み不可であるため注意が必要です。 上記のカシオ製の電卓は持ち込み可でした。

当日は時間配分がうまくいき、一通り最後まで解いたところで時間があまりました。 あまった時間は自信がなかった部分を見直したり、その場ですぐに解けなかった部分を解きなおしたりしていました。 制限時間いっぱいまで解答に使って最終結果を確認したところ、無事 合格 していました。 あと1、2問正解していれば成績優秀者となっていたので、合格によるうれしさもあったのですが、同時に成績優秀者になれなかった残念な気持ちもありました。 とはいえ、久しぶりの資格試験で合格できたのは達成感がありました。

感想とまとめ

ここまで統計検定2級についていろいろ書いてきました。 久しぶりの試験ということで試験勉強の仕方から模索する毎日でしたが、試験当日まで充実していた気がします。 勉強時間は計測していなかったのではっきりとは言えませんが、数十時間くらいではないでしょうか。 100時間は超えていなかったように思えます。 試験当日は想像以上に緊張してしまいましたが、たまにこのような緊張感のある試験を受けてみるというのも、メリハリをつけるためにはよいと思いました。

統計検定2級に向けて勉強を始めたあと、仕事でも役立つ場面もありました。 統計学の観点から機械学習や深層学習のアルゴリズムを見直すことでアルゴリズムに対する理解が深まったり、これまでおぼろげながら理解していた正規分布などについてもはっきりと理解できました。 まだまだPRMLなどの数式の多い本などは難しく感じますが、統計検定2級の勉強により用語を理解したことで、前よりは取っつきやすくなった気がします。

今後は統計検定1級の合格を目指したいと思います。 統計検定には準1級もありますが、こちらは幅広く浅い知識を問われる試験であると聞き、数式を追って理論を理解するための統計学の基礎を学びたい私にとってはすこし目指しているところが違う試験と感じました。 また準1級でも2級と同じCBTによる試験が開始されるかされないかの微妙な時期でもあり、試験方式が安定している1級を目指したほうがある意味やりやすいと感じたのもあります。

久しぶりの資格試験ということもあり、合格体験談を書いてみました。 ここで書いた内容が統計検定2級を受験するすべての人に参考になるとは思いませんが、試験勉強の参考となれば幸いです。